2007年01月18日
オオサカ シリアス ナイト
その12
英子はまだ信じられない気持ちでいた。あの夕月光が自分の目の前にいるなんて。
遠野の話に聞き入っている夕月の姿は異様であった。マジシャンのような帽子で髪の毛を隠し、大きなサングラスで顔を隠し、体型を色鮮やかなピンクの大きなコートで隠している。この姿を見て、誰が夕月光と思うだろうか。単なる目立ちたがり屋のおじさんである。だから誰も気付かない。
遠野の指摘がなければ、英子だってきっと分からなかっただろう。言われてみればなるほどである。間違いなく夕月光だ。 続きを読む
英子はまだ信じられない気持ちでいた。あの夕月光が自分の目の前にいるなんて。
遠野の話に聞き入っている夕月の姿は異様であった。マジシャンのような帽子で髪の毛を隠し、大きなサングラスで顔を隠し、体型を色鮮やかなピンクの大きなコートで隠している。この姿を見て、誰が夕月光と思うだろうか。単なる目立ちたがり屋のおじさんである。だから誰も気付かない。
遠野の指摘がなければ、英子だってきっと分からなかっただろう。言われてみればなるほどである。間違いなく夕月光だ。 続きを読む
2007年01月11日
オオサカ シリアス ナイト
その11
英子と英子の友人、三原は絶句した。
遠野の背後に立つ奇妙な風体の男は、まさしく伝説の俳優、夕月光であったからだ。
「夕月光…さんですか?」英子が恐る恐る訊ねる。
「ご紹介します。彼が夕月光です」
苦虫をかみつぶしたような表情で遠野が紹介すると、夕月光は被っていたマジシャンが被るような帽子を脱ぎ、笑顔を見せて軽く一礼した。
「夕月です。よろしく」
透き通るような声であった。 続きを読む
英子と英子の友人、三原は絶句した。
遠野の背後に立つ奇妙な風体の男は、まさしく伝説の俳優、夕月光であったからだ。
「夕月光…さんですか?」英子が恐る恐る訊ねる。
「ご紹介します。彼が夕月光です」
苦虫をかみつぶしたような表情で遠野が紹介すると、夕月光は被っていたマジシャンが被るような帽子を脱ぎ、笑顔を見せて軽く一礼した。
「夕月です。よろしく」
透き通るような声であった。 続きを読む
2007年01月09日
オオサカ シリアス ナイト
その10
その日、英子は、学生時代からの友人に会うために梅田駅に出かけた。カズが所属していた団体の情報を訊くためのものだったが、約束の時間より三十分早く梅田に着いてしまった。仕方なく阪急周辺をウロウロしていたところ、ソニープラザの近くで思いがけなく遠野警部を見かけた。
「警部、その節はどうも。お久しぶりです」
若い女性に声をかけられて面食らってしまった様子の遠野は、それが「山茶花」で出会った女性だと知ると、「おお、これはこれは」とあわてて深々とお辞儀をした。
続きを読む
その日、英子は、学生時代からの友人に会うために梅田駅に出かけた。カズが所属していた団体の情報を訊くためのものだったが、約束の時間より三十分早く梅田に着いてしまった。仕方なく阪急周辺をウロウロしていたところ、ソニープラザの近くで思いがけなく遠野警部を見かけた。
「警部、その節はどうも。お久しぶりです」
若い女性に声をかけられて面食らってしまった様子の遠野は、それが「山茶花」で出会った女性だと知ると、「おお、これはこれは」とあわてて深々とお辞儀をした。
続きを読む
2007年01月09日
オオサカ シリアス ナイト
その9
「警部、お待ちしていました」
斉藤が現場で待っていた。
「まいったなあ。警察の威信が問われるぞ。これでは…」
鶴橋駅からほど近い暗い路地の一角だった。駅に近いというのに、辺りには人家しかない。
「車も人通りも少ないところだ。こんなところへ死体を捨てる奴の気がしれんなあ」
遠野がつぶやくように言った。その傍らに三十代前半とおぼしき男性の死体が横たわっている。
「所持品から身元が割れました」
斉藤の報告だった。
続きを読む
「警部、お待ちしていました」
斉藤が現場で待っていた。
「まいったなあ。警察の威信が問われるぞ。これでは…」
鶴橋駅からほど近い暗い路地の一角だった。駅に近いというのに、辺りには人家しかない。
「車も人通りも少ないところだ。こんなところへ死体を捨てる奴の気がしれんなあ」
遠野がつぶやくように言った。その傍らに三十代前半とおぼしき男性の死体が横たわっている。
「所持品から身元が割れました」
斉藤の報告だった。
続きを読む
2007年01月09日
オオサカ シリアス ナイト
その8
遠野警部は、あれ以来、堂山の店には行っていない。行けば紺野冴子を思いだしてしまう。片思いではあったが、ほんのりとした気分にさせてくれた女の子だった。しかし、事件は意外な様相をみせ、感傷に浸っておれるような状況ではなかった。その夜、久しぶりに『山茶花』に行く決心をした。
午後八時を過ぎた堂山界隈は相変わらず賑やかだった。山茶花のドアを開き、中に入ると、「あらっ、お珍しい」ママが声を上げて迎えてくれた。 続きを読む
遠野警部は、あれ以来、堂山の店には行っていない。行けば紺野冴子を思いだしてしまう。片思いではあったが、ほんのりとした気分にさせてくれた女の子だった。しかし、事件は意外な様相をみせ、感傷に浸っておれるような状況ではなかった。その夜、久しぶりに『山茶花』に行く決心をした。
午後八時を過ぎた堂山界隈は相変わらず賑やかだった。山茶花のドアを開き、中に入ると、「あらっ、お珍しい」ママが声を上げて迎えてくれた。 続きを読む