2007年02月18日
オオサカ シリアス ナイト
その13
英子と三原が店を出た後、遠野警部は、夕月光に言った。
「今回の事件は、非常に複雑だ。一筋縄ではいかない事件のような気がする。今の警察の組織では、太刀打ちできないほど深い、大きな事件だと思っている。そこで、きみにお願いした次第だ。この気持ち、わかってくれ」
「脅かしたじゃないですか。言うこと聞かないとバラスぞって」
「いや、あれはそうでも言わないときみが素直に来てくれない、そう思ったからだよ」
「まあ、いいですけどね。面白そうな事件だから…」
「そうだ。きみでなくては解決しない。だから頼む」
夕月光は、長い足を椅子の上で組み替え、コーヒーをお代わりするとしばし瞑想した。
英子と三原が店を出た後、遠野警部は、夕月光に言った。
「今回の事件は、非常に複雑だ。一筋縄ではいかない事件のような気がする。今の警察の組織では、太刀打ちできないほど深い、大きな事件だと思っている。そこで、きみにお願いした次第だ。この気持ち、わかってくれ」
「脅かしたじゃないですか。言うこと聞かないとバラスぞって」
「いや、あれはそうでも言わないときみが素直に来てくれない、そう思ったからだよ」
「まあ、いいですけどね。面白そうな事件だから…」
「そうだ。きみでなくては解決しない。だから頼む」
夕月光は、長い足を椅子の上で組み替え、コーヒーをお代わりするとしばし瞑想した。
「申し訳ない。きみが忙しいことは十分承知している。だが、この事件は、きみの能力がないと解決出来ない事件だ。それに、今、噴き出ているものは氷山の一角だ。事件はまだまだこれからだと思っている。私を助けてほしい…」
瞑想する夕月光に遠野警部が話しかける。店内の客がザワザワし始めた。どうやら夕月光の存在に気付いたらしい。
「お話中、すみませんが、夕月光さんじゃないですか?」
中年の上品そうな婦人が、遠野と夕月の席に近づいきて、おそるおそる言った。
夕月は、被っていた帽子を上に上げ、婦人を見ると、ニッコリ笑って、
「そうですよ」と言った。
その瞬間、あろうことか、上品そうに見えた婦人が悲鳴を上げるようにして叫んだ。
「キャーッ」
拳を振り上げて涙を流し、鼻水さえ垂らしながら、「わたしの夕月さま〜!」と叫んだのだ。
その後の喧噪は語るまでもない。一人が誘因になって、次々と夕月の前に女性客が殺到した。そんな状態に慣れているのか、夕月光はさっと逃げたが、哀れだったのは、一緒にいた遠野警部である。彼はダンプカーのような婦人たちにもみくちゃにされ、践まれ、蹴られ、足蹴にされ、こづかれ、挙げ句の果てにその場で失神してしまった。
遠野が気付くと、夕月光はもういなかった。
夕月光が手伝ってくれれば、事件の解決は近い。ただ、問題は、それまで新たな事件が発生しないかということだけだった。
瞑想する夕月光に遠野警部が話しかける。店内の客がザワザワし始めた。どうやら夕月光の存在に気付いたらしい。
「お話中、すみませんが、夕月光さんじゃないですか?」
中年の上品そうな婦人が、遠野と夕月の席に近づいきて、おそるおそる言った。
夕月は、被っていた帽子を上に上げ、婦人を見ると、ニッコリ笑って、
「そうですよ」と言った。
その瞬間、あろうことか、上品そうに見えた婦人が悲鳴を上げるようにして叫んだ。
「キャーッ」
拳を振り上げて涙を流し、鼻水さえ垂らしながら、「わたしの夕月さま〜!」と叫んだのだ。
その後の喧噪は語るまでもない。一人が誘因になって、次々と夕月の前に女性客が殺到した。そんな状態に慣れているのか、夕月光はさっと逃げたが、哀れだったのは、一緒にいた遠野警部である。彼はダンプカーのような婦人たちにもみくちゃにされ、践まれ、蹴られ、足蹴にされ、こづかれ、挙げ句の果てにその場で失神してしまった。
遠野が気付くと、夕月光はもういなかった。
夕月光が手伝ってくれれば、事件の解決は近い。ただ、問題は、それまで新たな事件が発生しないかということだけだった。
Posted by ゆーじゅん at 14:38│Comments(0)
│第二章
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