2007年06月08日
オオサカ シリアス ナイト
その18
「どうぞ、遠慮なさらずに中へ」
ハンドルを握っていた中年の男が治郎を部屋の中へ誘った。治郎のそばには車の中で隣席に座っていた男が治郎をガードするようにして立っている。その男に追い立てられるようにして部屋の中へ入った。
豪壮な造りの建物であった。広々とした庭があり、芝生と大樹が邸宅の豪壮さをさらに印象づけていた。番犬らしい犬の鳴き声が頻繁に耳に響いた。
「どうぞ、遠慮なさらずに中へ」
ハンドルを握っていた中年の男が治郎を部屋の中へ誘った。治郎のそばには車の中で隣席に座っていた男が治郎をガードするようにして立っている。その男に追い立てられるようにして部屋の中へ入った。
豪壮な造りの建物であった。広々とした庭があり、芝生と大樹が邸宅の豪壮さをさらに印象づけていた。番犬らしい犬の鳴き声が頻繁に耳に響いた。
ガードマンらしき黒服の男が数人、入り口に突っ立っているそばを通り抜け、奥まった部屋に案内された。
ここは…? 治郎は辺りを見回して考えた。
車の中で目隠しをされていたのでまるで土地の見当がつかない。周りの雰囲気から察して山が近いような感じを受けた。箕面だろうか、六甲だろうか、しかし、地域まではわからなかった。部屋の中に入ると高級な調度品が目を捉えた。
「いらっしゃい」
野太い声に驚いて振り返ると男が一人立っていた。
「どうぞお座りになって楽にしてください」
男は治郎を椅子に座らせるとメイドを呼んだ。
「お客様にコーヒーを差し上げて、私は紅茶だ」
硝子のテーブルを挟むようにして対治郎と面する席に座った男は、治郎を直視すると笑顔をみせた。
「失礼しましたね。部下がお気に障るようなことをしませんでしたか?」
メイドがお茶を運んできた。そのメイドが立ち去るのを待って治郎が口を開いた。
「まったくわけがわかりません。私がなぜ、こんな邸宅に招待されたのか、あなた方がなぜ私を知っていたのかさえ、私には謎です」
「はっはは…。そうでしょう。そうでしょう。失礼しました。矢崎さん、率直に言いましょう」
六十代にも七十代にも見えるその男は、小柄でいながら意志の強さを感じさせる鋭い眼光を持っていた。老人でありながら老人を感じさせないオーラは、すべてその眼差しから来ているのではないかと治郎は思った。
「あなたは今、大阪で頻繁に起こっている誘拐殺人事件に非常な関心を持っていますね」
治郎は静かにうなづいた。
「あなたを今日、ご招待したのにはわけがあります。私たちの調査では、あなたはそれを記事にしようとまとめている、そうではありませんか?」
「その通りです。それがどうかしましたか?」
「これは警告と受け取ってください」
「警告…?」
「そうです。警告です。その記事を新聞に掲載することをあきらめてください」
「あきらめる? なぜ?」
「この事件は、あなたの考えているようなものではないからです」
「どうしてそれがわかるのですか? 私の原稿を読んでもいないのに?」
男は、ニヤリと笑い、一束の原稿用紙を治郎の前に置いた。
「あなたの書かれた原稿です。確かめてみますか?」
確かめるまでもなかった。目の前にあるのは治郎が書いた、今回の事件に関するレポートだった。
ここは…? 治郎は辺りを見回して考えた。
車の中で目隠しをされていたのでまるで土地の見当がつかない。周りの雰囲気から察して山が近いような感じを受けた。箕面だろうか、六甲だろうか、しかし、地域まではわからなかった。部屋の中に入ると高級な調度品が目を捉えた。
「いらっしゃい」
野太い声に驚いて振り返ると男が一人立っていた。
「どうぞお座りになって楽にしてください」
男は治郎を椅子に座らせるとメイドを呼んだ。
「お客様にコーヒーを差し上げて、私は紅茶だ」
硝子のテーブルを挟むようにして対治郎と面する席に座った男は、治郎を直視すると笑顔をみせた。
「失礼しましたね。部下がお気に障るようなことをしませんでしたか?」
メイドがお茶を運んできた。そのメイドが立ち去るのを待って治郎が口を開いた。
「まったくわけがわかりません。私がなぜ、こんな邸宅に招待されたのか、あなた方がなぜ私を知っていたのかさえ、私には謎です」
「はっはは…。そうでしょう。そうでしょう。失礼しました。矢崎さん、率直に言いましょう」
六十代にも七十代にも見えるその男は、小柄でいながら意志の強さを感じさせる鋭い眼光を持っていた。老人でありながら老人を感じさせないオーラは、すべてその眼差しから来ているのではないかと治郎は思った。
「あなたは今、大阪で頻繁に起こっている誘拐殺人事件に非常な関心を持っていますね」
治郎は静かにうなづいた。
「あなたを今日、ご招待したのにはわけがあります。私たちの調査では、あなたはそれを記事にしようとまとめている、そうではありませんか?」
「その通りです。それがどうかしましたか?」
「これは警告と受け取ってください」
「警告…?」
「そうです。警告です。その記事を新聞に掲載することをあきらめてください」
「あきらめる? なぜ?」
「この事件は、あなたの考えているようなものではないからです」
「どうしてそれがわかるのですか? 私の原稿を読んでもいないのに?」
男は、ニヤリと笑い、一束の原稿用紙を治郎の前に置いた。
「あなたの書かれた原稿です。確かめてみますか?」
確かめるまでもなかった。目の前にあるのは治郎が書いた、今回の事件に関するレポートだった。
Posted by ゆーじゅん at 09:35│Comments(0)
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