2006年12月12日
オオサカ シリアス ナイト
その7
「カズはある団体に所属していたようなの」
「団体? 何の団体だ?」
治郎はタバコに火を点け、一息吸い込むと大きく煙を吐き出した。
「カズの周りの人たちに話を聞いていくうちにわかったことだけど、その団体って、ある政治団体の青年組織でかなりの右派ということなの」
「若い奴にはありがちなことさ。大したことじゃない。それがどうかしたのか」
英子はコーヒーを口にすると、しばらく黙った。
「カズはある団体に所属していたようなの」
「団体? 何の団体だ?」
治郎はタバコに火を点け、一息吸い込むと大きく煙を吐き出した。
「カズの周りの人たちに話を聞いていくうちにわかったことだけど、その団体って、ある政治団体の青年組織でかなりの右派ということなの」
「若い奴にはありがちなことさ。大したことじゃない。それがどうかしたのか」
英子はコーヒーを口にすると、しばらく黙った。
「カズ…。もう生きていないんじゃないかと思って」
「どうしてだ。多分、忘れた頃に顔を出すさ。若い奴ってそういうところがある」
「そうじゃないの。その政治団体のことを調べたんだけど、かなり評判が悪いのよ。かなりの体育会系で、暴力行為は日常茶飯事だというし、噂では粛正と言って、平気で人を抹殺するようなところがあるというの」
「なんていう団体だ?」
「『龍』、ロンと読むらしいけれど、それ一文字の会。団体のヘッドは長崎四郎という27歳の男、正体は不明。誰も彼のことをよく知らないわ」
「『龍』か。聞いたことがある。関西を中心に活動している右派団体の孫組織だ」
「その団体にカズが所属していて、最近、抜けたがっていたという話を聞いたわ。それで、もしかしたらカズ、抜けさせてもらえなくて殺されたんじゃないかと…」
「まさか、そんなことはしないだろう。たかが政治団体の孫組織だ」
「ところが、話を聞くとすごいの。結束が固くて、情報は一切外には漏らさない。何を考えどう行動しようとしているのか、誰もわからないけれど、かなり危険な思想を持つ団体だってことがわかったの」
「危険思想…?」
「そう、目的到達のためには、人を人とも思わない。そんなところがあるって聞いたわ」
「そうか…。しかし、記者の私でも分からなかったものをよく調べられたな」
「たまたまよ。カズのことを調査しているうちに、一人の女の子の話から『龍』に所属していたんじゃないかという話が浮上して…。でも、本当のところは誰もわからないの。スカウトされた男の子も何人かいたようで、その子にも聞いたけれど、その子の話から、かなり恐い連中らしいということだけはわかったの」
治郎はタバコの火を灰皿に押しつけるようにして消すと、
「わかった。それじゃ、その団体を調べてみる。そこに辿りつけばカズの失踪の謎が少しはわかりそうだな」
「ええ、そうなの。でも、お兄ちゃん、危険な団体らしいから気を付けてね」
「わかった。それにしても、変な時代になったもんだな。変な新興宗教は現れるわ、危険思想を持った団体が現れるわ、殺人は起きるし…」
治郎の去った後も英子はその喫茶店にいた。
あれ以来、カズの姉である堂山のママには連絡が取れていない。ママに話を聞くことが出来ればもう少し、カズのことがよくわかるかも知れないのに…。今夜再び、ママの元へ訪ねてみよう、そう決心し、すっかり冷たくなった残ったコーヒーを飲み干すと、喫茶店を出た。コーヒー代は兄の治郎がすでに払っていた。
「どうしてだ。多分、忘れた頃に顔を出すさ。若い奴ってそういうところがある」
「そうじゃないの。その政治団体のことを調べたんだけど、かなり評判が悪いのよ。かなりの体育会系で、暴力行為は日常茶飯事だというし、噂では粛正と言って、平気で人を抹殺するようなところがあるというの」
「なんていう団体だ?」
「『龍』、ロンと読むらしいけれど、それ一文字の会。団体のヘッドは長崎四郎という27歳の男、正体は不明。誰も彼のことをよく知らないわ」
「『龍』か。聞いたことがある。関西を中心に活動している右派団体の孫組織だ」
「その団体にカズが所属していて、最近、抜けたがっていたという話を聞いたわ。それで、もしかしたらカズ、抜けさせてもらえなくて殺されたんじゃないかと…」
「まさか、そんなことはしないだろう。たかが政治団体の孫組織だ」
「ところが、話を聞くとすごいの。結束が固くて、情報は一切外には漏らさない。何を考えどう行動しようとしているのか、誰もわからないけれど、かなり危険な思想を持つ団体だってことがわかったの」
「危険思想…?」
「そう、目的到達のためには、人を人とも思わない。そんなところがあるって聞いたわ」
「そうか…。しかし、記者の私でも分からなかったものをよく調べられたな」
「たまたまよ。カズのことを調査しているうちに、一人の女の子の話から『龍』に所属していたんじゃないかという話が浮上して…。でも、本当のところは誰もわからないの。スカウトされた男の子も何人かいたようで、その子にも聞いたけれど、その子の話から、かなり恐い連中らしいということだけはわかったの」
治郎はタバコの火を灰皿に押しつけるようにして消すと、
「わかった。それじゃ、その団体を調べてみる。そこに辿りつけばカズの失踪の謎が少しはわかりそうだな」
「ええ、そうなの。でも、お兄ちゃん、危険な団体らしいから気を付けてね」
「わかった。それにしても、変な時代になったもんだな。変な新興宗教は現れるわ、危険思想を持った団体が現れるわ、殺人は起きるし…」
治郎の去った後も英子はその喫茶店にいた。
あれ以来、カズの姉である堂山のママには連絡が取れていない。ママに話を聞くことが出来ればもう少し、カズのことがよくわかるかも知れないのに…。今夜再び、ママの元へ訪ねてみよう、そう決心し、すっかり冷たくなった残ったコーヒーを飲み干すと、喫茶店を出た。コーヒー代は兄の治郎がすでに払っていた。
Posted by ゆーじゅん at 09:35│Comments(0)
│第二章
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