2006年12月07日
オオサカ シリアス ナイト
その5
遠野警部と斉藤は、会場が異様に興奮する中、席を離れ、会場を後にした。
「警部、どう思います。怪しいとは思いませんか」
「……」
「使人ですか。何だか異様な宗教でしたよね。でも、今回の事件に関係がありますかねぇ」
一人言のように斉藤が喋る。遠野は瞑想したまま何も答えない。
やがてカッと目を見開いた遠野が斉藤に向かって、
「斉藤、おまえ、今日の集会で気付かなかったか」
と言った。
「はっ?!」
斉藤はキョトンとしたまま遠野を見つめている。
「使人のことだよ。どこかで見たことがないか」
「えっ…。美しい男でしたよね。年齢は三十代前半といったところでしょうか…」
「そんなことじやないんだよ。あの男、元、シャーニーズにいたアイドルの宝光輝じゃなかったか」
「宝光輝…。そういえば、そんな感じでしたね。でも…」
「別に、元アイドルだったからどうというわけじゃないんだ。ただ、ああした大がかりな宗教だ。バックに何があるか知っておく必要がある。今回の事件と直接関係があるかどうかは別にして、私の予感では、事件解決の糸口をつかめるんじゃないか、そんな気がしているんだが」
「わかりました。一応、調査してみます。ところで警部、今日はこれからどうします?」
「私は、娘の元婚約者のことをもう少し調べてみる。きみはそっちを当たってみてくれないか」
「わかりました。では、後ほど合流しましょう」
斉藤はそう言ってJR大阪城公園駅に向かって走って行った。
遠野は、京橋駅へと向かった。
喧噪とした会場はさらに盛り上がりをみせていた。その中に、英子の兄、矢崎治郎の姿もあった。
矢崎治郎がこの会場を訪れたのは、日曜の特集記事に掲載する取材のためであった。「今、若者は」と題したテーマに基づいて、新興宗教にはまる若者を取材するというのが今回の目的だった。
場内を回っていた治郎は、そこで懐かしい顔を見つけた。大学時代の同僚の弟で、昔は一緒に遊んだことのある男だった。
近づいて声を掛けようとすると、向こうの方が先に治郎に気が付いた。
「先輩!」
白い衣服に身を包んだ彼は、傍らに色白で可愛い顔をした女性を連れていた。
「久しぶりだなあ。香山、元気にしてたか」
「ええ、矢崎先輩こそ元気でしたか」
「ところで今日はどうしてここへ?」
治郎が訊ねると、香山は、
「私、この集会を主催する担当の一人なんです」
そう言って胸を張った。傍らの女性は、喧噪と熱狂の中でどぎまぎしているように見えた。
斉藤はキョトンとしたまま遠野を見つめている。
「使人のことだよ。どこかで見たことがないか」
「えっ…。美しい男でしたよね。年齢は三十代前半といったところでしょうか…」
「そんなことじやないんだよ。あの男、元、シャーニーズにいたアイドルの宝光輝じゃなかったか」
「宝光輝…。そういえば、そんな感じでしたね。でも…」
「別に、元アイドルだったからどうというわけじゃないんだ。ただ、ああした大がかりな宗教だ。バックに何があるか知っておく必要がある。今回の事件と直接関係があるかどうかは別にして、私の予感では、事件解決の糸口をつかめるんじゃないか、そんな気がしているんだが」
「わかりました。一応、調査してみます。ところで警部、今日はこれからどうします?」
「私は、娘の元婚約者のことをもう少し調べてみる。きみはそっちを当たってみてくれないか」
「わかりました。では、後ほど合流しましょう」
斉藤はそう言ってJR大阪城公園駅に向かって走って行った。
遠野は、京橋駅へと向かった。
喧噪とした会場はさらに盛り上がりをみせていた。その中に、英子の兄、矢崎治郎の姿もあった。
矢崎治郎がこの会場を訪れたのは、日曜の特集記事に掲載する取材のためであった。「今、若者は」と題したテーマに基づいて、新興宗教にはまる若者を取材するというのが今回の目的だった。
場内を回っていた治郎は、そこで懐かしい顔を見つけた。大学時代の同僚の弟で、昔は一緒に遊んだことのある男だった。
近づいて声を掛けようとすると、向こうの方が先に治郎に気が付いた。
「先輩!」
白い衣服に身を包んだ彼は、傍らに色白で可愛い顔をした女性を連れていた。
「久しぶりだなあ。香山、元気にしてたか」
「ええ、矢崎先輩こそ元気でしたか」
「ところで今日はどうしてここへ?」
治郎が訊ねると、香山は、
「私、この集会を主催する担当の一人なんです」
そう言って胸を張った。傍らの女性は、喧噪と熱狂の中でどぎまぎしているように見えた。
Posted by ゆーじゅん at 09:54│Comments(0)
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