2007年06月14日
オオサカ シリアス ナイト
その1
江坂から中央区天満橋へ、英子は居を移した。新しい住まいは1LDKのマンションで以前の住まいとそう変わっているわけではなかった。ただ、江坂よりも市内の中心部にいる分、動きが取りやすかった。
結局、英子は休職したまま元のアパレル会社を退職してしまった。会社の部長からは何度か退職を思いとどまるよう連絡が入り、執拗に食事を誘われたりもしたが、最後には意志を貫き、会社と部長に別れを告げた。
カズの行方は杳として知れなかった。その上、兄の治郎までもが行方不明になった。この事件に関わる者はすべて消えて行く。しかし、英子はこの事件から手を引くつもりはなかった。今ではカズが無事でいるかどうかの保証さえない。それでも英子はこの事件の真実に触れるまでは追うことをやめない、密かにそう決心していた。
江坂から中央区天満橋へ、英子は居を移した。新しい住まいは1LDKのマンションで以前の住まいとそう変わっているわけではなかった。ただ、江坂よりも市内の中心部にいる分、動きが取りやすかった。
結局、英子は休職したまま元のアパレル会社を退職してしまった。会社の部長からは何度か退職を思いとどまるよう連絡が入り、執拗に食事を誘われたりもしたが、最後には意志を貫き、会社と部長に別れを告げた。
カズの行方は杳として知れなかった。その上、兄の治郎までもが行方不明になった。この事件に関わる者はすべて消えて行く。しかし、英子はこの事件から手を引くつもりはなかった。今ではカズが無事でいるかどうかの保証さえない。それでも英子はこの事件の真実に触れるまでは追うことをやめない、密かにそう決心していた。
その間も遠野警部からは度々連絡が入っていた。しかし、事件の捜査は遅々として進んでいなかった。
カズの異母姉が経営する「山茶花」にも長い間、顔を出していない。英子が「山茶花」を訪ねたあの時、異母姉のママは英子と遠野に何かを伝えようとしていた。何だったのだろうか。…そうだ。カズの病気のことだった。あの時、紺野美沙子、ミサの死体が発見されて、そのまま聴けずじまいになっている。
カズの病気…? カズはどんな病気だったというのだろうか。英子は近いうちに「山茶花」を訪ね、改めてその件について伺ってみようと思った。
着信音が鳴り、携帯を取ると遠野からのものだった。
「英子さんですか。遠野です。今、大丈夫ですか?」
「はい大丈夫です」
「お兄さんからは連絡が入りませんか?」
「はい。今日で10日になりますが、連絡は一切入っていません」
「そうですか。ところで『山茶花』を知っていますよね?」
「あ、はい。知っています。実は近い内にお伺いしようかと思っていたところなんです。出来れば遠野警部とご一緒できればと思って…」
「なくなりました」
「えっ…? なくなった?」
「はい。『山茶花』はもうありません。店を閉めています」
「どうしてですか? あんなに盛況なお店だったのに…」
「先日、久しぶりに訪ねたのですが、新しい店に変わっていました」
「どうしてでしょうか…?」
「私はママの身の上が心配です。今回の事件の裏には何か大きなものが動いています。だからママの身もどうなっているか、心配で仕方がありません」
英子は何か巨大なものに体を締め付けられるような感覚を覚え、携帯を落としてしまった。
「大丈夫ですか? 英子さん」
落とした携帯から遠野の声がスピーカーでも付けているように聞こえてくる。
カズの異母姉が経営する「山茶花」にも長い間、顔を出していない。英子が「山茶花」を訪ねたあの時、異母姉のママは英子と遠野に何かを伝えようとしていた。何だったのだろうか。…そうだ。カズの病気のことだった。あの時、紺野美沙子、ミサの死体が発見されて、そのまま聴けずじまいになっている。
カズの病気…? カズはどんな病気だったというのだろうか。英子は近いうちに「山茶花」を訪ね、改めてその件について伺ってみようと思った。
着信音が鳴り、携帯を取ると遠野からのものだった。
「英子さんですか。遠野です。今、大丈夫ですか?」
「はい大丈夫です」
「お兄さんからは連絡が入りませんか?」
「はい。今日で10日になりますが、連絡は一切入っていません」
「そうですか。ところで『山茶花』を知っていますよね?」
「あ、はい。知っています。実は近い内にお伺いしようかと思っていたところなんです。出来れば遠野警部とご一緒できればと思って…」
「なくなりました」
「えっ…? なくなった?」
「はい。『山茶花』はもうありません。店を閉めています」
「どうしてですか? あんなに盛況なお店だったのに…」
「先日、久しぶりに訪ねたのですが、新しい店に変わっていました」
「どうしてでしょうか…?」
「私はママの身の上が心配です。今回の事件の裏には何か大きなものが動いています。だからママの身もどうなっているか、心配で仕方がありません」
英子は何か巨大なものに体を締め付けられるような感覚を覚え、携帯を落としてしまった。
「大丈夫ですか? 英子さん」
落とした携帯から遠野の声がスピーカーでも付けているように聞こえてくる。
Posted by ゆーじゅん at 11:52│Comments(1)
│第三章
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Posted by アキ at 2008年09月11日 01:49
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