オオサカジン

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2007年05月08日

オオサカ シリアス ナイト

四月の晴れた土曜日のことである。
 遠野警部は矢崎英子から電話を受けた。午前九時、遅い朝食をすませた後のことだった。
 「おはようございます。矢崎英子です。警部、すみません、こんなに朝早くに電話をして…」
 英子とは夕月光と共に会って以来のことだ。電話の様子がおかしいことに気付いた遠野は、英子に言った。
 「何か、あったのかね?」
 「警部、申し訳ありませんが今日、お時間をつくっていただけませんでしょうか?」
 「わかった」
 遠野は即応して時間と場所を決めた。

 あの日以来、夕月光からの連絡は途絶えている。こちらから連絡を入れてもつながらない。どうしているのだろうか。本職の方が忙しくてそれどころではないのかも知れない。何しろ彼は国際的な売れっ子だ。
 だが、それにしてもおかしい、と遠野は思った。それならそれで何らかの連絡が入るはずだ。彼は、見かけはいい加減だが、約束を反故にして放ったらかしにするような男ではない。それに、マスコミが伝えるニュースの中に夕月光の話題が出てこない。映画の活動をしているのであれば、彼ほどのスターだ。何らかのニュースが新聞やテレビなどで伝えられないはずはない。
 「みどり、お父さん、出かけてくるぞ」
 みどりの部屋に向かって声をかけるが返事がない。婚約が破棄され、その婚約者が不審な死を遂げて以来、みどりは元気がない。時折、部下の斉藤がみどりを元気づけるために誘ってくれているようだが、今のところ大きな効果は現れていない。
 玄関に出て靴を履いていると、
 「お父さん、行ってらっしゃい」
 突然、現れた寝間着姿のみどりが明るい笑顔で見送ってくれた。
 「ね、お父さん」
 「なんだ?」
 「今日、晩ご飯つくれないけどかまわない?」
 「かまわないが、何かあるのか?」
 「斉藤さんがお祝いをしてくれるって、昨日、連絡があったの」
 「斉藤がお祝い? 何のお祝いだ」
 「忘れたの? 今日は私の誕生日でしょ」
 「あっ、そうだったか、ごめん。それで斉藤がお祝いをしてくれるというのか」
 「そうよ。はじめは断ったんだけど、もう予約しているから断れないって言って」
 「あいつらしいな。でもよかったじゃないか。お父さんと二人でお祝いをするよりマシだろう」
 そう言って遠野は笑った。
 「じゃあ、行ってくる」
 ドアを開けると朝の光が思い切り強く差し込んできた。
 「行ってらっしゃい」
 心持ち元気になったみどりの声が遠野の胸に響く。
 一日も早く事件を解決したい。あらためて遠野はそう思った。

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Posted by ゆーじゅん at 09:52│Comments(1)第二章
この記事へのコメント
続きを待ってました。
Posted by ヨッツン at 2007年05月09日 14:46
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