オオサカジン

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2006年11月30日

オオサカ シリアス ナイト

その1

 安田美菜がその集会にはじめて参加したのは、五月のはじめ、連休半ばのことだった。折悪しく雨で、出掛けるのをためらったのだったが、誘ってくれた香山の顔を思い出し、渋々ながら家を出た。
 香山は、大学時代の先輩で、美菜が密かに思いを寄せていた男性の一人だった。同じサークルということもあって親しく話をすることは出来たが、それ以上にはならなかった。なぜなら香山はサークルの人気者で、一番のモテ男であったから気持ちをうち明けることなど思いも寄らなかったからだ。

 それがどういった風の吹き回しか、卒業して三年、その間、ずっと音信不通だったのに突然、「面白い集会があるんだけど、僕と一緒に行ってくれない?」と電話で連絡をして来たのだ。
 美菜は電話を受けた時、「もしもし」という声を聞いて、胸をドキンと鳴らした。そして、「香山です。お久しぶり」と聞いた時には、足が震えて止まらなかった。
 JR大阪城公園駅に到着すると、大挙して人が降りた。人の波に流されるようにしてホームに下り立った美菜は、押されるようにして改札口を出た。香山とはこの改札口で待ち合わせの予定だったが彼はまだ来ていなかった。待ち合わせの時間までにはまだ十五分ほど時間がある。
 美菜は緊張していた。三年ぶりに香山と会うということもそうだったが、香山がなぜ自分を誘ったのかまるで見当がつかなかった。そのことも美菜にとって大きな緊張の要因となっていた。
 大阪城ホールで集会があると香山は言った。改札口を出た人の群れはみな大阪城ホールを目指しているように見える。美菜はどんな集会があるのか香山から何も聞かされていなかった。でも、美菜にとってはそんなことはどうでもよかった。香山にさえ会えればそれで満足だったのだ。
 約束の時間がやって来たが香山はまだ来ない。どうしたんだろう…と美菜は少し不安になった。もしかしたら待ち合わせの場所を間違ったのかしら、それともすっぽかされちゃったのかな、そんなことを考えているうちに、背後からポンと肩を叩かれた。驚いて振り向くと、すっかり大人っぽくなり、学生時代よりさらに洗練された香山の顔がそこにあった。

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Posted by ゆーじゅん at 09:23│Comments(0)第二章
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斉藤 リカ、決して表に出ない......【芸能界、決して表に出ない、マル秘、ないしょ話】at 2007年04月02日 22:07
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